URBANER THOUGHT #03|見せたいものがあるから、余白をつくる

【余白は、あとから決めてもいい】
待ち合わせの少し前、駅の洗面台でシャツの襟を直す。
直したかったのは襟のはずなのに、鏡の中の頬に目が止まる。
朝は気にならなかった薄いヒゲの影が、ここでは妙にはっきり見える。
襟のほうは、もうどうでもよくなってしまった。
ひげの影が悪いわけではない。
昨日なら、そのまま出かけたかもしれない。
ただ今日は、口元の表情まで、そのまま見える顔で会いたいと思った。
たいした理由ではない。自分がそういう気になった、というだけのことだ。
【何もない場所にも、理由がある】
余白と聞くと、何もない場所を思い浮かべる。
けれど顔の余白は、ただ剃って空けた場所ではない。
文章のまわりにある余白は、文字を消した跡ではない。
どの言葉を読ませたいかによって、空ける場所が決まる。
顔にも、似たところがあるのかもしれない。
ひげを剃ると、そこには肌があり、頬の輪郭があり、動く口元がある。
何を見せたいかによって、剃りたい日も、残したい日もある。
それを「身だしなみ」の一言で決めるのは、少し惜しい気がする。
誰のために、どんな顔でいたいのかが見えなくなる。
毎朝きれいに剃ることを規則にしたいわけでも、
ひげを残すことにこだわりたいわけでもない。
今日は剃る。
その理由を、自分で持っていたい。
【その日の顔を、その日に決める】
今日は何を見せたいか。そのために、どこを整えるか。
余白も、自分で選ぶものなのだと思う。
残念ながら、顔は思ったほど素直ではない。
頬から顎へ、少しずつ面の向きが変わるし、
自分の気分もいつも同じでもない。
剃りたいと思ったところに刃を沿わせるには、
道具のほうにも、その起伏に応じて動いてほしい。
YOHAKUに可動式の二つの回転刃があるのは、そのためだ。
頬や顎に沿わせ、短いひげを剃る。
見せたいものをはっきりさせるために、剃りたいところをきちんと剃る。
手のひらに収まる大きさにも理由がある。
朝の洗面台で一日の顔を決めなくてもいい。
出かけたあと、違う光の下で鏡を見てから、剃りたいと思うこともあるから。
どこに余白をつくるか。いつ、その余白をつくるか。
その両方を、使う人が決められるように。
【顔にも、余白がいる】
頬のひげを剃って、もう一度鏡を見る。
さっきより口元がよく見える。今日はこの顔で会いに行こうと思う。
襟を直しに来たことを思い出し、最後にもう一度、襟を見る。
けれど、最初からそれほど曲がっていなかったらしい。
Design Yourself.