URBANER THOUGHT|残った線のこと。

ヒゲを整えるとき、いつも少し不思議な気分になる。
整えているはずなのに、剃ったところよりも、残ったところのほうが気になる。
頬を少し整えたあと、鏡から一歩離れて、顎のラインを見る。
もう少し削ったほうがいい気もする。
でも、その「もう少し」をやりすぎると、何かが違う。
ほんの数ミリしか違わないのに、顔全体の印象まで変わって見える。
ヒゲを整えることは、単純に「いらないものをなくす」作業とは、少し違うのかもしれない。
どこまで消すか。
というより、
どこを残すか。
そこには、思っている以上に、自分でつくる余地がある。
自分では、どうありたいのか。
そして、社会の中で、どうありたいのか。
鏡の前で決めているのは、ヒゲの境界だけではない。
そのあいだにある、自分なりの距離なのかもしれない。
■残すほうには、正解がない。
頬はどこまで落とすのか。
口元は少し細くするのか。
顎のラインをどこへつなげるのか。
誰かが決めた正解があるわけではない。
同じ人でも、その日の髪型や服、気分によって、ちょうどよく見えるラインは少し変わる。
だから鏡の前では、ときどき手が止まる。
消すか。
残すか。
その小さな判断が、自分の顔を少しずつつくっていく。
■残したい線の、すぐそばまで。
URBANER ONEを考えるとき、私たちが気になったのも、そんな「境界」のことだった。
頬とヒゲの境目。
口元の細かなライン。
顎へつながる輪郭。
ONEの刃幅は20mm。
数字だけを見ると、ただの仕様に見える。
けれど、この小ささには理由がある。
広い範囲を一気に整えるためではなく、残したいラインのすぐそばまで、自分の手で確かめながら近づくため。
残したいものの、すぐそばまで行くための幅。
大きな刃なら、一度に広い範囲を整えられる。
でも、残したい線の近くでは、その大きさが少し気になることもある。
少しずつ見る。
少しずつ動かす。
必要なところだけに手を入れる。
何を残すかを自分で決めるなら、道具には、その判断を邪魔しない近さが必要だと思った。
■道具は、答えを決めない。
どんなヒゲが似合うのか。
どこまで残すのが正しいのか。
それを、道具が決める必要はないと思う。
今日は全部剃ってもいい。
少し残してもいい。
昨日と違っていてもいい。
ONEができるのは、その選択をしやすくするところまで。
最後に残す線くらいは、自分で決めたい。
鏡から少し離れて、もう一度、自分の顔を見る。
剃った場所より、最後に残ったラインを見る。
なくしたものではなく、残したものが、自分の輪郭になる。